2019年に公開されたレバノンの映画、「存在のない子供たち」
カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したり、アカデミー賞外国語映画賞に
ノミネートされたりと、高く評価された映画なので、既に鑑賞した人も
多いと思う。
仏、英タイトルは「capernaum」カペナウムだが、調べると
カペナウムはギリシャ語、ヘブライ語で、今日のイスラエルの
ガリラヤ湖の北西岸にある町の名前だった。
新約聖書の中に、”悔い改めなかったカペナウムの人達に対し、
イエスが滅びる事を予言した”とあったので、映画を見た後で、
私はこのタイトルが理解できた。
だが、日本語のタイトル「存在のない子供たち」はとても的を射ていて、
分かりやすくて、外国映画の日本語タイトルが??と思う事も有る中
このタイトルは良かった。
人は生まれる国も親も選ぶことはできない。
先進国でなくても、仮に経済的に恵まれていない国に暮らす人でも、
大方の人は人として、それなりの暮らしを営んでいる。
出生の記録がなく、自分の誕生日も知らない、学校に行くなんて問題外、
幼い頃から家族の為に働き続ける少年に対し、”生まれなきゃよかった”
とさえ言い放つ親。
遂に、少年は決断する……….。
裁判官が「ゼイン、君は何歳だね?」という問いに、主人公の12歳の
少年が、「そっちに聞いて」と怒りに満ちた表情で、両親を見る所から
スタートするこの映画。
「両親を訴えたい」とゼイン。「何の罪で?」と裁判官。
「僕を生んだ罪」とゼイン。
“ちゃんと育てられないなら、生まないで!”
”生んだんだったら、責任をもって育てて、そして愛して欲しい!”
悲痛な子供からの訴えだった。
日本に生まれて、普通の生活を送る事が当たり前だと思う私達に
世界にはこういう現実もあるのだと知らしめた。
世界の見え方が変わる、心に響く映画だった。
※写真は主役のゼイン。本名もゼイン・アル=ラフィアー
彼自身も苦しい生活を送るシリア難民でした。
栄養不足で痩せこけた体のせいか、12歳くらいだとは思えない
幼さが残る中、でもその表情、特に深い悲しみと絶望を訴える
目の力強さに、演技を超えた、本物の世界を実感します。
「存在のない子供たち」は今もYouTube(Kino films)に予告編があるので、
まだご覧になっていない方は、これだけでも是非、見て頂きたい!
そして、この映画を作った、ナディーン・ラバキー監督に感謝したい。
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